大判例

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大阪地方裁判所 昭和32年(行)14号 判決

原告 行田電線株式会社

被告 城東税務署長・大阪国税局長

訴訟代理人 平田浩 外四名

主文

原告の被告らに対する各請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告城東税務署長が、昭和三一年三月三一日原告の同二八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分法人税について、その更正決定税額を金八、二〇九、一二〇円とした更正決定は、これを取消す。右更正決定に対する再調査請求につき、同被告が同三一年五月二三日になした再調査請求を棄却する旨の決定は、これを取消す。右決定に対し原告から被告大阪国税局長になした審査請求につき、同被告が同年一一月二七日になした審査請求を棄却する旨の決定は、これを取消す。訴訟費用は被告らの負担とする。」旨の判決を求め、その請求原因として、

一、原告は株式会社であるが、昭和二八年七月三〇日(同年九月一八日登記)被合併法人三木圧延伸銅工業株式会社(以下単に被合併法人と略称する)を合併し、同会社の権利義務を包括承継し、法人税法三条による同会社の法人税の納税義務をも承継した。そして、原告並びに被合併法人はいずれも青色申告書を従前より継続して提出していたものである。そこで、原告は、昭和二八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の確定申告書中に、被合併法人の昭和二六年一〇月一日から同二七年九月三〇日までの事業年度の確定欠損金一、四一四、六一七円及び同年一〇月一日から同二八年九月一八日までの事業年度の確定欠損金一、七〇〇、五一〇円の合計金三、一一五、一二七円の欠損金を包括算入した。

ところが、被告城東税務署長(以下単に被告署長と略称する)は、同三一年三月三一日原告に対し、被合併法人の前記欠損金を否認し、前記同二八年度分の法人税額を金八、二〇九、一二〇円と更正する旨の決定をなし、原告は、その頃右更正決定の通知を受けた。そこで、原告は、右決定を不服として、同三一年四月二四日被告署長に対し再調査請求をなしたが、同被告は同年五月二三日これを棄却する旨の決定をなし、その頃、原告は右決定の通知を受けた。さらに、原告は、同年六月一八日被告大阪国税局長(以下単に被告局長と略称する)に対し、審査請求をなしたが、同被告は、同年一一月二七日に、「右審査請求は法人税基本通達八四(昭和二五年九月二五日付直法一―一〇〇法人税取扱についての各国税局長宛国税庁長官通達)により理由がないから、これを棄却する」旨の審査決定をなし、右決定の通知は同月二八日原告に到達した。

二、(被告署長のなした各決定の取消原因)

しかしながら、被告署長のなした右更正決定並びに再調査決定は、いずれも、同被告が法律に違反してなした違法な処分であつて、取消さるべきものである。

およそ、合併により合併法人が、被合併法人の納税義務を承継し(法人税法三条)、被合併法人の権利義務を承継する(商法一〇三条)ことは判例通説の認めるところである。そして、右被合併法人の権利義務の承継とは、被合併法人の財産を合併法人が個別的に承継するのではなく、被合併法人の資産負債の一切、すなわち権利義務一切を包括的に承継することで、このことは商法上の通説であり、また税法上の権利も義務と同様に、当然に合併により被合併法人から合併法人に承継されるのである。従つて、被合併法人の青色申告法人としての欠損金の繰趣控除権も当然に合併法人に承継されるのである(名城大学教授中川一郎氏の学説(甲第五、六号証の各二に掲げるもの)参照)。

ところで、本件の場合、原告及び被合併法人が共に従前より継続して青色申告法人であり、合併当時は勿論青色申告法人であつて、青色申告法人である期間中に発生した欠損金の繰越控除権を法人税法に基き有していたことは、被告署長において確認するところである。従つて、原告は被合併法人の青色申告法人としての欠損金の繰越控除権を当然承継し、これが権利行使の方法として、前記一記載のとおり、原告の昭和二八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の確定申告書に被合併法人の繰越欠損金を計上したのである。

以上のとおりであるから、後記の租税法律主義を徹底し、法人税基本通達八四を無視して、厳格に法人税法を解釈するときは、原告の右被合併法人の繰越欠損金の計上を否定すべき法律上の根拠はない。

しかるに、被告署長は、法律の解釈を誤り、前記のとおり、更正決定並びに再調査決定をなしたもので、右各決定は、いずれも違法に税額等を決定した処分であるから取消さるべきものである。

三、(被告局長のなした審査決定の取消原因)。

また、被告局長がなした前記審査決定は、法律に違反してなした違法な決定であるから取消さるべきものである。

(一)  我が国における租税の賦課徴収につき租税法律主義がとられていることは憲法三〇条、八四条並びに法人税法一条の規定に徴し明らかである。従つて、法人に対する租税の賦課が適法であるか否かは法人税法の規定によつて決定され、賦課された法人税に納税義務があるか否かも法人税法によつて決定される。また、租税の賦課に対する再調査、審査請求に対しても法人税法によつて決定され、特に審査請求に対する決定は、同法三五条によつて「その理由を付記した書面」によつてなすことを要するのである。

(二)  ところで、本件において、被告局長は、原告と被合併法人の合併によつて発生した合併差損金三、一一五、一二七円の発生原因及びその数額を認めているのに、原告の審査請求を棄却したわけである。従つて、その理由は、前記決定書記載のとおり、「法人税基本通達八四により理由がない」という一事につきるわけで、結局、基本通達によつて税務官庁の法人税法九条五項に関する解釈が統一されているので、同法九条五項の規定にかゝわらず、基本通達八四によつて税法上被合併法人の欠損金の算入は認められないということを説示しているものと推察される。そうすると、被告局長が原告の審査請求を棄却した理由は、法人税法九条五項によつて棄却したのではなくて、「基本通達八四」によつて棄却したものである。このことは、行政行為の表示主義の立場からも明らかである。

そうすると、被告局長は、右基本通達を実定法規の一部と看做して適用したものといわねばならない。成程、税務関係の公務員のなかには、「税法と会計原則」において、右「基本通達」又は「取扱通達」を説明して、「税務官庁の系統的組織における内部執務基準という形式をとつているとしても、それは実定法規と一体となつて租税体系を構成し、租税秩序を定立し、実定租税法規の補充として、それ自体規範的性格を有すべき他の一面の性格を有することが強調されている。」と述べている。しかし、かゝる解釈が許されないことは、前記租税法律主義を規定した憲法の規定からも明らかである。

しかるに、被告局長は、租税法でない法人税基本通達を適用して原告の審査請求を棄却する旨の決定をなしたのであるから、右決定は法律によずしてなした違法な決定であつて、取消さるべきものである。

(三)  しかも、前記二記載のとおり、法人の合併は被合併法人の動産、不動産、債権、債務その他一切の財産を合併法人が包括的に継承するものであるところ、法人税法九条五項は、法人の繰越欠損金の算入を明定しており、被合併法人の財産を包括的に継承した合併法人についても右法条の適用があることは明らかである。

しかるに、右法条により被合併法人の損金を算入しなかつた被告局長のなした前記審査決定は、違法なもので、取消されねばならない。

四、よつて、原告は被告らのなした請求の趣旨記載のとおりの行政処分たる各決定の取消を求むるため本訴に及ぶ。

と述べた。

被告ら指定代理人らは、いずれも「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」旨の判決を求め、答弁として、

一、原告主張の請求原因事実中、一記載の事実は認めるが、原告が合併後最初の事業年度が始まる日の前五年以内に開始した事業年度において被合併法人に生じた欠損金合計三、一一五、一二七円をその所得計算上損金として算入する権利を有すること並びに被告署長及び被告局長のなした本件各決定が違法であることはいずれもこれを争う。

二、原告は、本件審査決定は法律でない法人税基本通達を適用して棄却した違法がある旨主張するが、その事実はない。

なるほど、本件審査決定通知書には原告主張のとおりの記載があるし、法人税基本通達は、元来国税庁長官において税務行政の取扱基準を示し、法令の解釈を統一する等の目的で管下の諸機関及び職員に対して発せられたものであつて、行政規則に属し、法規の性質を持つものではなく、従つて、税務官庁がなした課税処分等が、たとえ通達によつたものであつたとしても、その通達自体が法律に違反しておれば、その行為が違法であることは、原告所論のとおりである。

しかしながら、前記審査決定の理由の趣旨は、他の会社を吸収合併した原告において、被合併会社の欠損金を原告のそれとして計上しているが、そのような計算は税法上認められないから、原処分は相当であるというもので、法人税基本通達「八四」により云々とあるのは、その後に続く文章が省略されているが、右基本通達によつて、税務官庁の法人税法九条五項に関する解釈は統一されていて、原告主張のような解釈に従うわけにはいかないという意味であり、被告局長のなした右解釈の正当であることは後記のとおりであつて、原告の右主張は理由がない。

三、(一) 法人税は、各事業年度毎に所得金額を算定し、これによつて課税せられるものであり、その所得金額は総益金から総損金を控除したものとするのが原則である(法人税法九条一項)が、例外として、いわゆる青色申告法人については、ある事業年度に欠損を生じたときは、引続き青色申告をすることを条件に、その後五事業年度以内の各事業年度の所得計算上、これを損金に算入することができることになつている(同法九条五項)。右欠損金繰越控除の規定は、税法が、法人税は各事業年度毎の所得によつて課税する建前をとつている関係上、各事業年度を通じて所得計算をする場合に比し税負担が過重となる場合が生ずるので、これが緩和を図るために設けられたのであるが、その適用は法人全部には及ばず、帳簿を整備し、これが記帳の確実と認められる青色申告法人に限られているのである。

そして、法人税法九条一項の原則規定と同条五項の規定とを対照してみれば、青色申告法人で右の欠損金の繰越控除が認められるためには、前後において法人格の独立性と同一性を有することを要することは明らかである。

ところで、会社の吸収合併の場合の被合併法人は、合併によつてその法人格が消滅し、独立性を失うものである。従つて、たとえ、原告主張の如く、繰越欠損金の控除が青色申告法人の権利であつて、被合併法人が合併の際、従来青色申告をしていて引続き青色申告をすれば繰越欠損金の控除が認められる立場にあつたとしても、合併後被合併法人はもはや独立して青色申告をするに由ないものであり、それを原告主張の如く、合併法人が被合併法人の権利義務を包括承継し、かつ納税義務を負担することを理由に、「被合併法人の損金を合併法人の所得の計算上損金に算入する権利をも承継した」とする主張は失当である。

(二) ところで、原告は、名城大学教授中川一郎氏の学説(甲第五、六号の各二に掲げるもの、以下中川説という。)を援用して、自己の主張を正当づけようとするのであるが、その失当なことは以下に述べるとおりである。

(1)  右見解の骨子とするところは、青色申告法人が欠損金の繰越控除をなしうることを権利と考え、会社の合併の場合には、この権利は、商法一〇三条にいわゆる合併により消滅した会社の有した権利に該当するから、被合併法人の右権利は、当然合併法人において繰越控除をなすことができ、欠損金の繰越控除が、税務行政上否認されれば裁判所にその救済を求めることができるから、それは法によつて保障された法律上の利益であり、従つて、権利であると論じ、これを単なる恩典とする説を非難するわけである。

(2)  しかしながら、欠払金の繰越控除を規定する法人税法九条五項の規定は、当該事業年度の所得金額を計算して行く過程の一事項を定めた技術的なものであつて、法人税法の所得の計算方法を定めたものに過ぎず、被合併法人にかゝる計算方法が是認されているからといつて、合併に際し、これを商法一〇三条にいわゆる権利として合併法人に承継されることはない。会社の合併に際し承継せられるのは権利及び義務であつて、資産たりえないような単なる法人の計算上の数額的なものまでは承継されない。

また、若し、欠損金の繰越控除が税務行政上否認されれば、裁判所にその救済を求めることはできるが、だからといつて、直ちに、これを商法一〇三条にいう権利であるということにはならない。のみならず、行政救済を受けることができるのは、欠損金の繰越控除が否認せられた結果、当該法人の所得金額の計算に誤りを生じた場合に限るのであつて、欠損金の繰越控除自体を権利と観念し、この権利の侵害自体が行政救済の対象とせられるのではない。

(3)  ところで、合併に際し、合併法人と被合併法人の関係を規律するにあたり、商法では、被合併法人の貸借対照表とは無関係に、具体的な積極財産(権利)と消極財産(義務)の包括的な承継を規定しているが、税法では、このような商法上の合併の効果が生じた場合に合併にともなう納税義務ならびに税務経理の方法、所得金額の計算方法を規定の対象としているのであつて、所得計算に関する事項については、各事項についてその計算方法を個別的に規定し、規定のない事項については、一切旧会社限りで処理され、新会社に影響を及ぼさないという建前をとつているのである。

そして、法人税法九条以下の課税標準に関する規定が対象としているのは、法人の経済取引である。会社の合併についても、税法上は、合併という経済取引の実態をどのようにとらえるかということが問題とされ、これに課税負担公平の見地から、税務政策上の立法がなされている。

(4)  しかるに、前記中川説は、合併の経済的な実態を考慮することなく、権利義務の包括承継即人格承継と即断して議論を進めている。

しかし、現実の合併は人格の合一あるいは承継という形では行われていない。合併に至るまでの両会社の交渉経過をみるならば、互に相手会社の資産内容を十分に調査し、すべてのことがらを経済的に評価して利害得失を慎重に考慮した上で合併条件を定め、合併契約を結ぶわけである。そして、合併差益を規定した法人税法九条の五、被合併法人の清算所得を規定した同法一二条の二の一項、被合併法人の最後事業年度を定めた同法七条五項の規定などを見れば、法人税法は、前述のような合併の経済的実態に着目して、被合併法人は合併の日に消滅し、合併法人は合併の日に増資が行われ、被合併法人の資産が引き継がれたものとして課税する立場をとつているということができるのであつて、合併法人が被合併法人の人格を承継し、被合併法人は合併法人の腹中にはいつてその存続を続けるものとは考えていないのである。

すなわち、被合併法人の税務所得計算は、最後の事業年度の末日である合併の日にすべて遮断されるのであつて、もともと被合併法人の所得計算にあたり暦年主義による不利益を緩和する趣旨で設けられた所得計算上の技術的規定にすぎない欠損金繰越控除の問題が、合併以後の事業年度に及んで行くようなことはあり得ないところである。

(5)  次に、前記中川説は、準備金(積立金)の引当金の引継が認められていることを被合併法人の欠損金を合併法人において繰越控除しうるという論拠の一としている。

しかしながら、準備金ないし積立金は、特定の財産ではなく、計算上の数額に過ぎず、それ自体は、権利でも義務でもなく、また、経済的な価値を有するものでもない。合併にあたつて引継がれるのは、被合併会社の財産であり、債権であり、債務である。それらの積極資産と消極資産の差額(純資産)と合併により増加した資本額との差額が積立金などになる。

商法は、存続会社の資本充実をはかるために、この差額を資本準備金として積立てるべきこととしているが、(同法二八八条の二の五号)、税務計算上は、被合併法人の資本積立金及び法人税法一六条に規定する積立金額については合併法人の資本準備金として積立て、それ以外の貸倒準備金、特別修繕引当金などの引当金で、合併による解散に際し、益金に算入しなくてもよいものは資本準備金に積立てず、合併法人のそれぞれの勘定に加算すべきものとしている。

中川説が掲げている各種の準備金、引当金に関する法人税法などの規定は、いずれも右のような性質のものであつて、これを、税法上特別の規定がなくても、被合併法人の欠損金を合併法人の所得計算上当然に繰越控除できるという主張の論拠にすることはできない。

(6)  さらに、中川説は、合併減資益金などの益金不算入について、合併法人の清算所得として課税され、積立金は被合併法人において課税ずみであるから、合併法人の益金には算入されず、その他の合併差益は被合併法人において、課税されていないから合併法人において課税するのであり、商法上の合併の効果として、税法上も当然このような効果を生じると説いている。

しかしながら、合併減資益金は、合併会社の交付する株式が被合併会社の資本額の金額に満たないときに生じるのであるから、この金額が被合併会社の清算所得として課税されるようなことはありえないことがらである。

また、右中川説をそのまゝ延長すると、被合併法人の資本の金額より金額の株式を交付し、被合併法人に清算所得が生じて課税された場合、合併法人に生じた合併差損は、被合併法人において清算所得として課税された金額であるから、合併法人では損金に算入すべきであるということになるが、税務計算上、合併差損が損金に算入されることはありえないところである。

これらの合併差益金、合併減資益金や合併差損の損益算入の許否に関する税務法規の規定や取扱は、商法の合併に関する規定や解釈から当然に出てくる性格のものではなく、税法の規定や会計理論をまつて、はじめて可能なことがらなのである。

(7)  合併法人において欠損金を繰越控除することも、立法論としてはなりたちうることがらであるが、現行法人税法の立場及びその解釈は被告ら主張のとおりである。

(8)  以上の次第であるから、中川説のいうように、被合併法人の欠損金を合併法人において繰越控除できることを権利とし、これを承継するものと解することには、到庭賛同できない。

四、以上のとおりであるから、被告らのなした本件各決定はいずれも正当であつて、何らの違法も存しないから、原告の本訴請求は失当である。

と述べた。

(証拠省略)

理由

第一、まず、原告の被告局長に対する請求について判断する。

原告主張の請求原因一記載の事実については当事者間に争がない。

一、ところで、原告は、請求原因三の(一)及び(二)記載のとおり、被告局長は、租税法でない法人税基本通達を適用して原告の審査請求を棄却する旨の決定をなしたので、右決定は法律によらずしてなした違法な決定であつて、取消さるべきものである旨主張し、被告局長は、被告ら主張事実二記載のとおり、被告局長のなした右決定には、原告主張の如き違法はない旨抗争するので、まずこの点を判断することとする。

およそ、我が国における租税の賦課徴収につき租税法律主義がとられていることは、憲法並びに税法の諸規定に徴し明らかであるし、審査決定は、その理由を附記した書面により、これを当該請求をなした法人に通知しなければならないことは、法人税法三五条五項の規定するところである。ところで、原告に対する本件審査決定通知書には、「被合併法人の欠損金を損金算入されたいという貴社の申出は、法人税基本通達八四により理由がありませんので、原処分を相当と認めます。」旨記載せられていること、並びに右基本通達「八四」は、「被合併法人の法九条五項の適用を受ける損金は、合併法人の各事業年度の所得の計算上、これを損金に算入しない。」旨定めていることについては当事者間に争がない。

そこで、通達の法的性質について考えるに、

通達の法律的根拠は、国家行政組織法一四条二項の「各大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。」という規定にある。しかし、職務上の上級官庁が、その下級官庁に対して、その職務の執行について命令をなし得ることは、およそ行政機関の組織上当然のことがらであつて、法律の規定をまつて始めてかゝる権限が上級官庁に生ずるのではない。従つて、右の国家行政組織法の規定は、創設的な性質を有するものではなく、いわば当然のことがらを注意的に規定したものに外ならないと解され、そこにいうところの「各大臣、各委員会及び各庁の長官」だけが通達を発する権限を有するのではなくて、一般に行政組織上の上級官庁はすべてこの権限を有するのである。そして、通達は、単に、行政庁間の事務取扱についての指針ないし基準を示すものであるから、通達は法規として国民を拘束することはないものと解するを相当とする。

そうすると、前記認定事実に右通達の性質をも併せ考えると、前記理由書の趣旨は、結局、「法人税基本通達八四によつて、税務官庁の法人税法九条五項に関する解釈は統一されていて、他の会社を吸収合併した原告において、被合併会社の欠損金を原告のそれとして計上しているが、そのような計算は税法上認められないので、原処分は相当である。」という趣旨に解されるから、右基本通達「八四」が法人税法九条五項の解釈として間違つているかどうかの点(この点の解釈の当否については後記認定のとおりである。)はともかく、被告局長のなした審査決定が、法令でない前記基本通達「八四」によつて棄却した違法なものであるということはできない。

よつて、原告の右主張は理由がない。

そこで、進んで、右基本通達「八四」が、法人税法九条五項の解釈として正しいものかどうかを審究することとする。

二、原告は請求原因事実三の(三)記載のとおり、「法人の合併は、被合併法人の動産、不動産、債権、債務その他一切の財産を合併法人が包括的に継承するものであるところ、法人税法九条五項は、法人の繰越欠損金の算入を明定しており、被合併法人の財産を包括的に継承した合併法人についても右法条の適用があることは明らかである。しかるに、右法条により被合併法人の損金を算入しなかつた被告局長のなした前記審査決定は、違法なもので取消されねばならない。」旨主張し、被告局長は、その主張三記載のとおり、「合併にあたり、合併法人の欠損計算には法人税法九条五項の適用はなく、被告局長の右決定は適法である。」旨抗争するので、法人税法九条五項の解釈として、法人が合併した場合に、被合併法人に欠損金があり、その欠損金が合併法人の五年以内に開始した事業年度に当る事業年度において生じている場合に、右法条を適用して合併法人の所得の計算上これを損金に算入できるかどうかの点について判断することとする。

右の点について、学説は分れているが、法人税法九条五項が設けられた立法趣旨は、元来、法人税は、各事業年度毎に所得金額を算定し、これによつて課税せられるものであり、その所得金額は総益金から総損金を控除したものとするのが原則である(法人税法九条一項)が、税法が法人税については各事業年度毎の所得によつて課税する建前を採つている関係上、各事業年度を通じて所得計算をする場合に比し税負担が過重となる場合が生ずるので、これが緩和を図るため、例外として、帳簿を整備し、これが記帳の確実と認められる青色申告法人に限り、ある事業年度に欠損を生じたときは、引続き青色申告をすることを条件に、その後五事業年度以内の各事業年度に限り、その各年度の所得計算上、これを損金に算入することができることとしたものであつて、いわば、青色申告法人の特典とも解され、その適用は、課税原則の例外として、制限的に解するのが相当であるから、被合併法人の法人税法九条五項の規定の適用を受ける損金は、合併後の合併法人の各事業年度の所得の計算上、これを損金に算入できないのであり、すなわち、右の場合には、同法条の適用はないものと解するのが相当である。

蓋し、(1)まず、比較法的に考察するに、原本の存在並びにその成立に争ない乙第一号証の一によれば、次のことが認められる。

(イ)  アメリカにおける従来の内国歳入法(一、九三九年法)一一二条は、リオーガニゼーシヨンとして六種の取引を規定し、このリオーガニゼーシヨンによる資産の交換については、その資産を取得した法人が、譲渡法人の基準価額を承継することを条件として、課税除外の特典を与えることとしていたが、通常の資産の交換の場合は勿論、法令による合併の場合においても、被合併法人の積立金は合併法人に引き継がれるが、繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことは明確でなく、税務上合併差損等がいかに扱われるかは必ずしも明らかでなかつたが、たゞ、被合併法人等の純損失を合併法人等において繰越控除することについては、明文はないが、繰越控除できないということが確立した解釈であつた。

(ロ)  ドイツ法人税法第二章第七節(合併及び組織変更)中の一五条二項は、財産の譲渡による利益については、国内資本会社の財産が承継会社の社員権と交換に他の内国資本会社に一括して移転され、かつその利益につき将来法人税が課せられることの保証がある限り、課税除外が行われる旨規定している。そして、合併差損については、必ずしも明らかでないが、法人の欠損は、その欠損の生じた法人の人格に結びつけられているという考え方が財務裁判所の確立された判例であり、組織変更又は合併の場合における欠損の引継ないし繰越控除が否認されることは一般に認められた原則となつている。

(ハ)  従つて、日本の税法における合併の規整、アメリカの従来の税法におけるリオーガニゼーシヨンの規整、並びにドイツの税法における合併及び組織変更の規整には、その領域に若干のずれがあるが、これらが共通的に規整している領域においては、その規整の態様は極似しているといえる。

(ニ)  尤も、アメリカにおいては、一九五四年に内国歳入法は改正され、同法(以下新法と称する)第一章C節第五款(繰越)の規定が新設され、新法三八一条によれば、譲渡法人(合併の場合には被合併法人)から取得法人(合併の場合には合併法人)へ、一定の場合を限り繰越が認められることとなつていること、そして、同法三八二条a項において、(合併の場合を考えると、)欠損法人(被合併法人)の各課税年度において、一定の事実が存する場合には、当該課税年度以後においては、(合併法人において)純損失の繰越控除を行うことはできない旨を規定しているのである。

以上のことを綜合すると、結局、アメリカ、ドイツにおいては、「会社の合併に際し、被合併法人の損金は、合併後の合併法人の各事業年度の計算上、これを損金に算入できない」という原則的な解釈がとられており、この繰越控除ができるためには、アメリカにおける右新法の如き、これを許す旨の特別な法規が存し、その場合には一定の条件を付して、厳格にその取扱を規整していることが窺われるのである。

そうすると、右の如き立法例を参考として、我が国における法人税法九条五項を解釈するときは、同条項は被告合併法人の損金を合併法人の所得計算上繰越控除できるかどうかにつき直接規整していないし、また、かゝる場合に生ずる弊害を除去するための何等の制限規整も規定していないのであるから、結局、被合併法人の損金を、合併後に合併法人の所得計算上繰越控除することはできないもので、法人税法九条五項の規定は、右会社の合併に際しての合併法人の損金の計算には適用はないものといわねばならない。

(2) 次に、法人税法九条五項の規定の立法経過について考えるに、成立に争ない乙第二号証及び証人中村平男の証言によると次のことが認められる。

(イ)  法人所得税制度の創設時から大正一五年までは繰越欠損金に補てんした所得は課税しない制度が採用されていた。つまり、繰越欠損金が消えるまでは課税されなかつたが、この当時においても被合併法人の繰越欠損金の補てんした合併法人の所得に対しては課税されていたようである。このことは、合併に当つては、被合併法人の合併時の財産状態に従つて合併契約書が作成され、その契約書に従つて合併会社への引継がなされ、合併会社の経理も被合併会社の帳簿価額ではなく、その契約書に従つてなされるものであつて、繰越欠損金を引継ぐというような合併はあり得ないという考え方に立つていたようである。

(ロ)  大正一五年から昭和一五年までの間は繰越欠損金又は欠損金の損金算入を認める制度は存在しなかつた。

そして、欠損金の繰越控除の制度は、昭和一五年の法人税法が制定されたときから採用された。

(ハ)  昭和一五年以後の法人税法においては、「法人の所得は事業年度毎に打切つて計算するのが原則であり、各事業年度の損金を通算することは許されないのであるが、企業、特に天然資源に依存している漁業のような企業は、年によつて損益が常ならず、そのようなときに、利益のある年にだけ課税して、損失を填補することに対し何等の考慮もしないならば、法人にとつて余りに酷となる。」という理由から、欠損金の繰越控除の規定が採用され、ときには、歳入の関係と相俟つて欠損金の繰越控除ができる期間を一ケ年或は三ケ年とされたこともあつたが、昭和二五年三月のシヤープ勧告による税法改正により、その期間が法人税法九条五項のとおり五年となつて現在に至つている。

(ニ)  ところで、昭和二八年から同二九年にかけて貿易商社の経営が特に悪化し、その救済策として合併が考えられたことがあり、その際、合併してもなお過去の欠損金を合併会社において控除できるようにしようとする立法措置が真剣に考慮されたのであるが、一般的に規定することは極めて困難で、弊害が甚しく、終に、実現を見なかつたのである。

以上のとおりであるから、以上の立法過程を綜合して考えると、結局、会社の合併に際し、被合併法人の欠損金を合併後の合併法人の欠損に繰越算入する一般的規定についての立法措置が研究されたが、諸種の困難を伴い遂に立法されるに至らず、現在、法人税法九条五項の規定のみが存することが認められるから、かかる経緯を考えると、同法条は、法人の合併に際し、被合併法人の欠損金を合併後の合併法人の欠損に算入することができることをも規定したものということはできない。

(3) 次に、法人税法九条五項と関連する他の法律の規定について考えるに、法人税法は法人に対する課税についての一般的規定を定めたものと解されるが、同法律の外に特別法が制定せられており、法人税の課税の特例を規定した一連の保護立法がなされている。すなわち、企業再建整備法(昭和二一年法律第四〇号)三四条の九の二項、農林漁業組合再建整備法(昭和二六年法律第一四〇号)二〇条一項、二二条、農業協同組合整備特別措置法(昭和三一年法律第四四号)一一条、農林漁業組合連合会整備促進法(昭和二八年法律第一九〇号)一四条によると、これらの規定はいずれも、組合を整理するため合併が行われる場合に、被合併組合の背負つている欠損金、計算上の欠損金、それは合併後の組合に承継されるという趣旨のことを規定しているのである。

そうすると、合併に際し、被合併法人の損金繰越を特に許す場合には、右の如き一連の特別規定が存することを考えると、法人についての一般的課税規定を定めている法人税法中の同法九条五項を解釈するに当つては、合併に際し、被合併法人の欠損金は、合併後の合併法人の欠損の計算上、繰越欠損金として計算できないものと解するのが相当である。

(4) 次に、商法の合併の規定と税法との関係について考えるに、商法一〇三条によると、会社の吸収合併の場合は、被合併会社の一切の権利義務を包括的に承継するという建前になつているのであるが、その内容は、結局、被合併会社の積極財産、消極財産を合わせて承継するというだけであり、右のような経理関係をそのまゝ承継する趣旨ではないと解するのが相当である。

蓋し、(イ)現実の合併は、人格の合一、あるいは承継というような形では行われていない。合併に至るまでの両会社の交渉の経過を考えるに、互に相手会社の資産内容を十分に調査し、すべてのことがらを経済的に評価して、利害得失を慎重に考慮したうえで合併条件を定め、合併契約を結ぶものであることは、企業の性質、商法四〇九条、四一二条などの規定から容易に窺えるところである。

(ロ) そして、法人税法上も、合併差益を規定した法九条の五、被合併法人の清算所得を規定した法一二条の二の一項、被合併法人の最後事業年度を定めた法七条五項の規定などをみれば、法人税法は、右(イ)記載のような合併の経済的実態に着目して、被合併法人は合併の日に消滅し、合併法人は合併の日に増資が行われ、被合併法人の資産が引継がれたものとして課税する立場を採つているということができるのであつて、合併法人が被合併法人の人格を承継し、被合併法人は、合併法人の腹中にはいつて、その存在を続けているものと解すことはできないのである。

(ハ)  また、損金繰越の特典は、青色申告は申告者としての被合併法人に認められているもので、青色申告者たる法人の個性というものに着眼して許したもので、その会社が特に指定された帳簿組織をもつておつて、正確に記帳していて始めて許されるわけであるから、その移転性はないものといわねばならない。

(ニ)  以上のとおりであるから、被合併法人の税務所得計算は、最終事業年度の末日である合併の日にすべて遮断されるのであつて、もともと前記法人税法九条五項の立法趣旨に徴しても、欠損金繰越控除の問題が、合併後の事業年度に及んで行くと解することは困難であるからである。

(5) 次に、法人税法九条五項の規定の性質について考えるに、前記(2)記載の立法経過並びに前記(4)記載の会社の合併に際しての経理関係などの点を綜合すると、右法条は、法人の所得金額計算のための規定であつて、その計算方法を定めた技術的規定であるといわねばならない。元来、税法は、商法上の合併の効果が生じた場合にともなう納税義務並びに税務経理の方法、所得金額の計算方法を規律の対象としているのであつて、所得計算に関する事項については、各事項についてその計算方法を個別的に規定しているのである。従つて、規定のない事項については、一切旧会社限りで処理され、新会社に影響を及ぼさないという建前をとつているものといわねばならないから、法人税法九条五項についてもまた、合併後の合併会社の損金計算には被合併会社の欠損金は計算されないものと解されるのである。

(6) ところで、原告の援用する中川説について考えるに、

(イ)  同説の骨子とするところは、「青色申告法人が欠損金の繰越控除をなしうることは、かかる法人の権利であつて、会社の合併の場合には右権利は、各種の会社に準用せられる商法一〇三条にいわゆる合併により消滅した会社の有した権利に該当するから、被合併法人の右権利は、当然、合併法人において繰越控除ができる。」というにあるが、かゝる説に、にわかに賛成できないことは、前記(3)ないし(6)において記したとおりである。

(ロ)  また、中川説は、その論証として、「合併減資益金等の益金不算入について、合併減資益金は、被合併法人の清算所得として課税され、積立金は被合併法人において課税ずみであるから合併法人の益金には算入されず、その他の合併差益は、被合併法人において課税されていないから、合併法人において課税するのであり、商法上の合併の効果として、税法上も当然このような効果を生ずるのである。」と説くのであるが、合併減資益金は、合併会社の交付する株式が被合併会社の資本額に満たないときに生じるのであるから、この金額が被合併会社の清算所得として課税されるようなことはありえないことであつて、この点においても中川説は誤りをおかしているものといわねばならない。

(ハ)  さらに、中川説は、論証の一として、「各種準備金(積立金)、引当金の引継が認められていることをもつて、被合併法人の欠損金を合併法人において繰越控除できる。」旨主張するのであるが、準備金ないし積立金は特定の財産ではなく計算上の数額にすぎず、それ自体は権利でも義務でもなく、また経済的な価値を有するものでもない。合併にあたつて引継がれるのは前記のとおり、被合併会社の財産であり、債権債務である。これらの積極財産と消極財産の差額(純資産)と合併により増加した資本の額との差額が積立金となるのである。

商法は、存続会社の資本充実をはかるために、この差額を資本準備金として積立てるべきこととしているが、(同二八八条の二の五号)、税務計算上は、被合併法人の資本積立金及び法人税法一六条に規定する積立金額については、合併法人の資本準備金として積立て、それ以外の貸倒準備金、特別修繕引当金等の引当金で、合併による解散では益金に算入しなくてもよいものは、資本準備金に積立てず、合併法人のそれぞれの勘定に加算すべきものとしているのであつて、中川説の掲げている各種の準備金、引当金に関する法人税法などの規定が右のような性質のものである点を考えると、右規定があることをもつて、同説の如く、税法上特別の規定がなくても、被合併法人の欠損金を合併法人の所得計算上当然に繰越控除できることの論拠とすることには、にわかに賛成できない。

(ニ)  以上の次第であつて、被告がその理論的根拠として援用する中川説には、にわかに賛成できないわけである。

(7) 最後に、政策的観点から考えるに、およそ課税は公平に行われねばならないから、脱法行為が顕著で、不公平をきたすような法条の規定やその解釈は望ましくないと解されるところ、仮に、法人税法九条五項の規定が、法人の吸収合併にあたり、合併後の合併法人の欠損の計算にも適用があると解すると、その弊害は著しいものといわねばならない。蓋し、多大の所得をあげた法人は、多大の欠損を生じている法人を吸収合併することにより、当然に課税されるべき所得を被合併法人の欠損金の繰越欠損金に算入して、課税をのがれ、結局、合併法人は法人税をのがれ、その納付すべき税金により合併会社の実質的拡張をはかる結果となるからである。そして、かかる脱法行為を助長するような解釈をなすことは、結局、租税公平の原則にも違背するわけであるから、かかる観点から考えても、法人税法九条五項の規定は、吸収合併に際して、合併後の合併法人の所得計算上被合併法人の欠損金を繰越計算するような場合には、適用がなく、かゝる合併法人の所得計算上被合併法人の欠損金の繰越算入はできないものといわねばならない。

以上の次第であるから、被告局長のなした右審査決定には、右原告の主張の如き法律の解釈を誤つて課税した違法はないものというべく、原告の右主張はこれを採用するに由ない。

三、そうすると、被告局長に対する、同被告のなした本件審査決定につき、前記の如き違法があるとして、これが取消を求める原告の本訴請求は失当であるから、これを棄却することとする。

第二、次に、原告の被告署長に対する請求について判断することとする。

原告主張の請求原因一記載の事実については、当事者間に争がない。

ところで、原告は請求原因二記載のとおり、「被告署長は、法律の解釈を誤り、本件更正決定並びに再調査決定をなしたもので、右決定は、いずれも違法に税額等を決定した違法な処分であるから取消さるべきものである。」旨主張し、被告署長は、その主張三記載のとおり「右各決定には法律の解釈を誤つた違法はなく、適法なものである。」旨抗争するのであるが、前記第一の二において判示したとおりの理由により、被告署長のなした右更正決定並びに再調査決定には、右原告の主張の如き法律の解釈を誤つて税額等を決定した違法はないから、右原告の主張は採用するに由ない。

そうすると、被告署長に対する、同被告のなした本件更正決定並びに再調査決定につき、右の如き違法があるとして、これが取消を求める原告の本訴請求は失当であるから、これを棄却することとする。

よつて、訴訟費用の負担につき、民訴八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 入江菊之助 弓削孟 中川敏男)

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